<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 旅夜書懷>
<Format: 五言律詩>
<Year: 1964>
<BookName: 唐詩選　上>
<Translator: 斎藤晌>
<style: 漢文無假名>
<style2: 日本漢文訓讀無假名標注>
<TranslatedTitle: 旅夜、懷を書す>
<BookPage: 236-237>
<UsedPage: 2>
<Feature: 1>
<End Header>
<Poem>
細草微風岸，
危檣獨夜舟。
星垂平野闊，
月湧大江流。
名豈文章著，
官因老病休。
飄飄何所似，
天地一沙鷗。
<End Poem>
<Translation>
こまかいやわらかな草の上を、そよかぜがわたってゆく岸邊。そこへ舟をつないで泊った夜、帆はおろされて、ぽつねんと高い帆柱だけが見える。自分はひとりそとへ ほばしら 坐っている。おっびらいた平野は遠くへつづき、地平線にまで星が垂れさがって閃めいている。そうこうするうちに、月がぽっかり大江から浮かび出て、その光は江水にうつって湧き流れてゆく。つくづくとわが身の上を考える。人間の名は文學で世にあらわれるものではないらしい。天下を經綸するには官途に出て榮達するしかないが、自分はすでに年老いて、しかも病氣がちなので、低い官職すらやめるほかなくなった。 ところ定めず、ふらふらとさすらいゆくわが境遇を何にたとえようぞ。まったく、天地の間をあまかけって、今、砂濱に遊んでいるあの一羽の鷗、あれこそ自分の姿ではないか。
<End Translation>
<Formatted Translation>
こまかいやわらかな草の上を、そよかぜがわたってゆく岸邊。
そこへ舟をつないで泊った夜、帆はおろされて、ぽつねんと高い帆柱だけが見える。自分はひとりそとへ ほばしら 坐っている。
おっびらいた平野は遠くへつづき、地平線にまで星が垂れさがって閃めいている。
そうこうするうちに、月がぽっかり大江から浮かび出て、その光は江水にうつって湧き流れてゆく。
つくづくとわが身の上を考える。人間の名は文學で世にあらわれるものではないらしい。
天下を經綸するには官途に出て榮達するしかないが、自分はすでに年老いて、しかも病氣がちなので、低い官職すらやめるほかなくなった。 
ところ定めず、ふらふらとさすらいゆくわが境遇を何にたとえようぞ。
まったく、天地の間をあまかけって、今、砂濱に遊んでいるあの一羽の鷗、あれこそ自分の姿ではないか。
<End Formatted Translation>